△薬師丸 充(ミツル)
犯人は、この中にいる――。
薬師丸 充(やくしまる みつる)は思考を巡らせた。犯人を捕まえて逆に『解剖』してやれ。そして『恥祭り』の刑だ。それほどクラスの代表的存在である自分に楯突いた罪は重い。
「最高に恥ずかしい思いさせてやんよ!」
充はクラスメイトの顔を順に見渡していった。皆、真剣な目をしている。
『俺を陥れたのは誰だ?』という疑心暗鬼で、もはやクラスの誰も信用ならない。
誰が犯人で誰が味方なのか。すべてを看破するなど無理な話だ。
充は蒼空の顔をチラリと覗き見た。彼女なら犯人が誰か解っているのかも知れない。あるいは眠そうな目をしている彼女なら信用できるのかも知れない。『深海蒼空(ふかみ そら)め、知っているなら真相を言いやがれ』、この地獄を終わらせてくれと願う。
充は姿勢を低く保った。
『俺のパンツを返せっ』
犯人――パンツ泥棒は必ずこの手で捕まえてみせる。両手で股間を隠しながら、充は血沸き肉踊る思いで最後の勝負を仕掛けるのだった。
△パンツ泥棒
最低な遊びだと思った。
通常のフルーツバスケットに加えて悲惨なルールを提案した充を許してはいけない。だから逆に自分の提案したルールで苦しんでもらうことにしよう。
私は充のブリーフパンツを顔面に押し当ててクンカクンカした。
「ハァハァ…」
なんという美臭…。
今日の5時間目、『お楽しみ会』が予定されている。
演目はフルーツバスケットだ。通常のこのゲームはあらかじめフルーツの名前を割り振られる。《鬼》がフルーツの名前を言って、該当者は席を立ち、別の席へ移動しなければならないというものだ。ウィキ●ディアで調べたから間違いない。今は「黒い靴下履いてる人」などの条件を提示して、該当者が席を移動するアレンジのほうが一般的である。
充はこれに『《鬼》はズボン、及びスカートを脱ぐ』というルールを加えてきた。鬼は常にパンツ丸出しでいなければならないのだ。
鬼は席を奪取できたら、新たな鬼となった者からズボンなりスカートを奪って履くことができるわけだ。それ以外は通常のフルーツバスケットと同じである。
つまり、もしいつまでも席に座れなかったら、男子女子問わず、皆の前で下着姿を晒し続けることになるのだ。
この恥ずかしいルールをあろうことか女子側も受けてしまった。
自信があるのだろう。仕方ない。それならば充には《鬼》になってもらおう。永遠にね。
私は頬が緩んでしまった。
そう、我々が残酷なのは《鬼》となった者を全員で協力して鬼のままにしておくことだ。通称 籠目(かごめ)システム。誰だって自分が新たな鬼になりたくない。制限時間いっぱいまで、パンツ丸出しのやつなんて一人で充分ということ。新たな鬼をつくらないのは暗黙の了解である。このイジメにも似た恥晒しの籠目システムに充は嵌ってもらう。
フルチンでね。
名付けて『フルチンフルーツバスケット』だ。
「充…」
クンカクンカ。
「あぁ、いい臭い♡」
コメント
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恥祭りの刑も気になる今日この頃w
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> 恥祭りの刑も気になる今日この頃w
今回は「ミツルのパンツを盗んだパンツ泥棒は誰だ?」というミステリ仕立てになっております。
でも恥祭りも自分で書いておいてなんですがパワーワードですね。
祭りというくらいだから祭られるんでしょう。
だんじり祭り、トマトぶっつける海外の祭り、はだか祭り、てんてこ祭りなどの奇祭を参考に考え中です。
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個人的にはいじめる側も多少は好意があったほうが嬉しいですね
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> 個人的にはいじめる側も多少は好意があったほうが嬉しいですね
小●生のいじめは往々にして残酷なものです。好きな子にちょっかいを出すような淡いいじめもありますが。距離感を測れずについやりすぎたり、欲望に忠実だったり。大人の常識では測れない、何が起こるかわからない淡い青春の話ってけっこう好きです。
なので作中でマジギレしているように見えても実はドキドキしていたり、マジで金玉潰ししていてもブチュと潰れちゃわないように無意識の手加減をしていたり。「嫌よ嫌よも好きのうち」みたいな…。
そういうのが作中で表現できてないわけですねぇ。好意が作中に垣間見えるように精進します。
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恥祭りの刑へのコメント有難うございます。
好意の件は難しいですね。
例えば自分なんかは女側は好意なんて一切なく生意気な男を辱しめて懲らしめるとかのシチュエーションの方が好きですし。
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> 恥祭りの刑へのコメント有難うございます。
> 好意の件は難しいですね。
> 例えば自分なんかは女側は好意なんて一切なく生意気な男を辱しめて懲らしめるとかのシチュエーションの方が好きですし。
いいですよね。みんなの見てる前で女子から受ける無慈悲のフルスイングのビンタ。いや、いいというより恥ずかしいし悔しいしムカつくけど、この辱めが倒錯感を生んでしまうのです。強い男の癖に弱い女の子なんかに叱られてる〜。俺情けないっす〜感は堪らないのです。
これに好意のあるなしは、やはり強く関わりますねー。見ず知らずのギャルにオヤジ狩りされるのは距離感遠すぎで萌えないけど、好きな子からいろいろ信頼され、期待もされていたのに、悪事(浮気とか)がバレて、一転して失望される展開とかgoodです。