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見ててあげる(2)

 僕は思わず大きな声を出してしまった。
「やだ。声大きいよ」
「ちょっと…」
 予測した通りというか、そんなことより愛衣ちゃんの口からオナニーだなんて…。
「早くぅ? 先生来ちゃうよ? 今の時間なら会議してるよ、きっと」
「いや、でも」
「なに?」
「そういうのって人に見せるものじゃ…」
「は?」
「だっ、だから、だからね。あの、そういうのは、一人で、ね? することは、あるかも知れないけど、ね? 人前ではさ…」
「もしかして恥ずかしいの?」
「えっ?」
「男の子ならできるでしょ? 小学生でもやれることだよ?」
「いや、さすがに子供には無理でしょ」
「精通してなくたって勃起させて女の子に大きさを確認してもらうの」
「ぐ…、勃…て」
「男のくせに女の子に全部言わせて恥ずかしくないの?」
「そ、そんな…」
「ごめん。やっぱり見せてくれない男の人なんて、私、無理…」
「ぅえ!? ええぇ!?」
「当然だと思う」
「そんな。いやそんな、だってみんな本当にやって…? えー?」
 まずい。
 僕は天国から地獄に突き落とされたような気がした。
「私帰るね」
「見せる。見せられるよ!」
「…」
「なんてことない。見せられないなんて言ってないよ? いやちょっと急だなって… じゃなくてちょっと知らなかったからさ。心の準備が…」
「何?」
「いや大丈夫。やるよ?」
「…」
 愛衣ちゃんは帰ろうとする素振りをとりあえずやめてくれた。
「ふー」
「…」
「見せるんだよね? …今見せるからね」
「…」
 愛衣ちゃんが僕の下半身に注目している。
 僕はジッパーを下ろして小便をする要領でペニスを取り出そうとした。
「待って。全裸だよ?」
「そ、そう…だよね」
 なんてことだ。
 好きな子の前で、行為が始まるわけでもないのに生まれたままの姿を晒すなんて考えたこともなかった。
 僕の身体がほのかに熱を帯びていく。
「ヌードデッサンだっておちんちんだけを露出しないでしょ?」
「うん。だよね」
 無茶苦茶な理屈だ。
 でも脱ぐしかない。
 制服のボタンを外し、上着を脱いで素肌を晒す。
 ベルトを外し、ズボンを脱いだ。
 愛衣ちゃんは一歩、二歩と僕に近づいてきた。
 そして微笑んだ。
「早く」
 僕ははいと返事をして靴下を脱ごうとする。
「あ、靴下はそのままでいいよ」
「え?」
「早くパンツ」
「え、あ、はい」
 しかし僕は躊躇してしまった。
 ブリーフの裾に手を掛けて彼女の反応を伺う。
「どうしたの?」
「いやあ。ちょっとやっぱり恥ずかしいな。いやあの脱ぐけどさ。ちゃんと脱ぐけどさ」
「もう意気地なし…。ホントにそれでも男の子? 手伝ってあげようか?」
「え?」
「だから脱ぐの手伝ってあげる」
 彼女は言うやいなやツカツカと歩み寄ってきて僕のブリーフに手を掛ける。
 愛衣ちゃんの長い黒髪が僕の鼻先に近づく。
 いい香り。
 と思っている間にするるっと足首までブリーフが引き下げられた。
「あっ!」
 僕は手遅れ感たっぷりだがブリーフを引き戻そうとして腰をかがめる。
「もう邪魔。何この手は?」
 愛衣ちゃんはブリーフを引き上げようとする僕の手をわりと強めにペシンッと叩いた。
「ったっ」
 屈んだ彼女の頭の高さに僕の股間が位置している。
 彼女は足首からブリーフを抜こうと僕の左足首を掴んだ。
 僕はそれに従って左足首、次に右足首と足を上げる。
 女の子にパンツを脱がされるなんて、なんかこっ恥ずかしい。
 愛衣ちゃんは僕のブリーフを手に持って顔を上げた。
「あぁっ」
 僕は思わず両手で股間を隠す。
 愛衣ちゃんは僕の顔を見上げ、目を覗きこんでくる。
 どうしたの? なんで隠すの?と。
「あぁっとその…これは…」
「手どけて?」
 愛衣ちゃんが片手で僕の左手をどける。
 そして右手もどけられる。
 観念した僕は彼女の行為に従う。
「…」
「…」
 愛衣ちゃんはじぃーと無表情で僕の股間を見つめていた。
 品定めされているようだ。
「あの…」
「ちっちゃ…」
 彼女は小さく聞こえるか聞こえないかくらいのか細い声で呟く。
「ま、いいや。さ、オナニーして」


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